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モロッコ鉄道の旅 4.マラケシュ&カサブランカ

中庭だけ豪華?な宿
 マラケシュの駅も町の中心部から離れている。フェズでは新市街に泊まったから、今度は旧市街、それもモロッコらしい宿に泊まりたいというのが私の希望だ。駅前で拾ったタクシーにガイドブックで適当に選んだ宿の名前を告げたら、適当なところで降ろされてしまい、「この先は車が入れないからまっすぐ歩いていけ」と言われた。

 でも、どうも場所が違う感じ。周りの人に聞いても知らないという。仕方ないからマラケシュのシンボルになっているジャマエルフナ広場にいったん出てから安宿街を目指す。最初の一軒は「満室」。あたりの宿は「12時にならないと分からない」。しかも暖房付の部屋は1部屋だけとか、ツインベッドじゃなくてダブルとか、制約が多い。ダメだったら「どこかほかにありませんか?」と次の宿を紹介してもらう方法で、リアド・ハムザという宿を見つけた。ダブルベッドだけど暖房があるという。1泊朝食付きで400DH。私たちは朝食を食べている時間がないので350DHにおまけしてくれた。

マラケシュ駅に到着 マラケシュ駅外観 泊まったホテルのある路地

 モロッコ風の宿というのは、建物内に中庭風のスペースがあるのが特徴だ。このリアド・ハムザも入口はすんごく地味なのだが、建物内部の中庭スペースが美しく、つい「ここでいっか」という気になった。この中庭にはロビーのようにテーブルとベンチを置いた一角のほか、噴水とクッションや水パイプを置いたコーナーもある。壁や柱は派手目のモザイク模様。

 中庭と廊下にいる限り、結構贅沢な気分になれるのだが、部屋のドアを開けると同時にガッカリさせられる。私たちの部屋は8畳弱といった狭さ。窓は廊下側にしかなく、部屋の中は暗い。おまけにバスルームの入口はドアじゃなくてカーテン。12時にチェックインできるというから、シャワーを浴びようと12時10分すぎころに戻ったら、まだ掃除中で「あと4分待って」と言う。結局は40分待たされた。コストパフォーマンス的にはまったく魅力のない宿だった。エアコンがフル稼働して暖かくすごせたことだけは評価しよう(部屋の写真はタテ位置で撮ったのでここに載せられない)。

中庭には水飲み場みたいな噴水がある 3階から中庭を見下ろしたところ 部屋の外は豪華な感じがするのだが…

ドンツクの町
 マラケシュからは砂漠ツアーに出かける人が多いらしい。今回の旅で訪ねた町で一番たくさんの外国人観光客をみかけた。私たちは砂漠には行かないし、出発前はマラケシュを省略するかどうか悩んだくらい。24時間足らずの滞在で観光したのはジャマエル・フナ広場周辺だけだ。

 モロッコ旅行も終わりに近づいてきたので、まずはスークで買い物というか冷やかしに出かける。みやげ物をマジマジとみるのは旅の終盤にして初めてだ。歩き始めてすぐ、あちこちの店でラクダグッズが売られているのに気づく。砂漠の国だから無理もない。土産物屋のお兄さんやおっさんはそんな私の視線に気づき「ラクダ〜」と迫って来る。

色鮮やかなカーペットを売っていた ボディペインティング用型紙 夜店の準備が始まったジャマエル・フナ広場

 値段を聞くと、テキトーなボッタクリ金額を言ってくる。そこですごく驚いた顔をして「とてもじゃないけど、いらない」という素振りを見せると「じゃ、いくらなら買うんだ?」と食い下がってくる。ここでこっちもテキトーなことをいうと「よし、それで売ろう!」なんてことになってしまう。だから、どうみても安すぎる値段を言うか、「あちこち見てから後で帰ってくる」ということにしている。ただし、あまり安い値段を言うと相手が本気で怒り出すリスクはある(私も日本語で「このタコ!」と言われた)。

 いろんならくだがあるのだが、石や金属のラクダは重い。木のラクダは壊してしまいそう。皮の小さな縫いぐるみを買うことにする。スークをあてもなくを歩いていると、オープンスペースに出た。店というよりも露天が並んでいる一角で、当然安そう。ここで値段交渉をする。一軒目のオッサンはやる気なく値引きに消極的なのでパス。2軒目のおばちゃんはいい感じだ。3軒目のお兄さんは品数が少ない。

 ここでおばちゃんの店にターゲットを絞り、皮製のらくだと当初の予定になかった木製のパズルを「セットで買うから値引きして」と強引に迫る。結果は2つで50DH。たぶんこれでもまだまだ高いのだろうけれど、あまり時間をかけなかった割には安くなったからこれでいいか。

 この一角は石鹸やアカスリ、手や足に模様を書くヘナとその型紙、スパイスなどを売っている店がオープンスペースを取り囲んでいる。スパイス屋の店先に生きた亀が何匹もいるので、これも食べるのかと思って尋ねたらペット用だったみたいだ。言葉が通じないから、周りの食品を指差して食べるマネをしてから、亀を指差し食べるマネをしてみせただけだ。返事は「NO」だった。近くにいた買い物客のおじいちゃんは私のジェスチャーで意味が分かったらしく、楽しそうにククッと声を殺して笑っていた。

暗くなると調理の火が映える

 ジャマエル・フナ広場がにぎわうのは夕方から。日が傾いたころに広場を見渡すカフェに行って広場を見下ろす。飲み物は瓶のファンタが15DH(約225円)とけっこうなお値段。場所代が入っているからしょうがない。ウェイターがサービスするのではなく、入口で飲み物を買い、自分で瓶を持って入場するシステムなので、長居できるのはよかった。

 大道芸人のたたく太鼓は「ドンツク、ドンツク、ドンツク」と、言葉にすると日本風のリズムで馴染みがある。昼間からウロウロしていた水売りのおっちゃんたちの本業は、どうみても水売りよりもモデルだ。派手な服装に金属製のコップと水を入れた袋を手にして外国人観光客に「写真撮らんかね」と寄っていっては断られている。バッターだったら1割打者ってところだ。

 いよいよ日が傾くと、大道芸の連中をおしのけるようにして屋台の準備が始まった。店の準備は簡単らしい。すぐさまあちこちからモクモクと煙が上がっている。シシカバブを焼いているのかな。この展望台で1人旅をしている日本人の旅行者と一緒になった。彼はマラケシュがあまりにも気に入ったので、砂漠ツアーのあと予定を変更してマラケシュに戻ってきたのだそう。その気持ち、なんとなく分かるような気がした。最初は「時間がなかったらマラケシュを省略しようか」なんて言っていたけど、個性的な町で来てよかった。その晩は、ベッドに入っても頭のなかで大道芸人のドンツクがこだましてなかなか寝付けなかった。

■カサブランカ&ラバト
 カサブランカは空路でのモロッコの玄関とはいえ、訪ねた町の中では一番モロッコらしさに欠ける大都市だ。馴染みある名前の外資系の銀行が軒を連ね、マクドナルドとケンタッキー・フライドチキンが同じ道道に並んでいる。

 観光客目当てに寄ってくる人もいないし、メディナ(旧市街)のスークも地元客中心。マラケシュやフェズのスークに団体観光客の姿が目立ったのとは対照的だ。旗を持った添乗員のあとについて歩く日本人ツアー客の姿はずいぶん浮いている。

左側がスーク 観光案内所で地図をもらった 遠くに見えるのがハッサン2世モスク

 みやげ物の種類も少ない。それでも最後の町だからと、一生懸命に値切って皮のスリッパ(バブーシュ)を買う。「マラケシュではそういう派手な(高そうな)やつが80DHだった」と言ったら、「あぁ、これかい? これなら50DHだよ」と言われた…。私の欲しいのよりも安かった。どうにか70DHまで値切り、店のお兄ちゃんと記念撮影。妙に馴れ馴れしくベタベタ触ってくる兄ちゃんだった。夫は近くの店でモロッコの人気女性歌手のCDを購入した。

 2泊したのはホテル・プラザ。高級そうなのは名前だけで、午後7時から暖房が入ると言われて宿泊を決めたものの、実際にはセントラルヒーティングに触っても「ほんのりとぬくもりを感じる」程度で、部屋全体温めるパワーはない。ここでよかったのは、建物の一番上に展望台?のようなところがあり、眺めがすごくよかったことだ。国内最大のモスクだというハッサン2世モスクはここから遠くに眺めただけで、訪問せずに終わった。

 カサブランカで2泊してもやることがないので、ラバトまで日帰りで出かける。カサブランカから列車で1時間もかからず運賃は32DH(480円)。さすが首都だけあって駅はきれいだし、落ち着いた感じのする町だ。といっても、わずか数時間の滞在で旧市街の中にも入らなかったので、ゴミゴミしたところは目にしなかっただけかもしれない。

ラバト駅に到着したところ ハッサンの塔の敷地入り口 ハッサンの塔

 一番の観光名所らしい「ハッサンの塔」へタクシーで往復する(往路8DH、復路6DH)。12世紀末に建設が始まったモスクが未完成でたくさんの柱だけが残り、ミナレットの「ハッサンの塔」も未完成のまま残っている。モロッコ人の観光客がちらほらいる程度で外国人観光客らしい人の姿はない。ミナレットには上れないので、敷地内をぶらぶら歩きムハンマド5世の霊廟を覗いただけだ。川向こうの町の眺めと、敷地入り口の馬に乗った衛兵が印象に残った。

 ラバト駅に戻り、カサブランカへの切符を買おうとして驚いた。窓口の前に列ができていて、開いた窓口に順番に人が行っている。日本なら見慣れた光景だが、ここはモロッコ。これまでは窓口の周りに半円状の塊が形成されて窓口に四方八方から手が伸びるのが普通だったので、この整然とした行列はまったくモロッコらしくない。よくみたら近くに警備員らしき人がいて睨みをきかせていた。行儀よく列を作っているのも納得だ。

 モロッコという国は10日弱の駆け足旅行ではよく分からない。もっとウザイ人が多くて疲れるのかと思っていたのだが、そうでもない。テロの影響なのか、列車の写真を撮っていると「撮影禁止」と怒る人もいる(その代わり「俺を列車と一緒に撮ってくれ」みたいな運転手もいる)。正直いうと、予想よりもよそよそしい国と感じた。相性が悪いっていうことかな。(完)


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