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モロッコ鉄道の旅 2.迷宮都市フェズ

  
   
旧市街

 新市街の観光案内所で旧市街(メディア)まで「歩いて行ける」と聞き、ぶらぶら歩いていく。途中、地元の女の子ばかりの団体6人に声をかけられ、写真を撮ってあげた。アラビア語もフランス語もできないのだが、それなりに「じゃあ、今度は私も入ってそっち向きで夫に撮ってもらいましょう」みたいなことは自然な流れで通じる。メールアドレスを教えてくれたので、日本に帰ってからメールに添付して送ってあげた。

学生かと思ったら看護士さんだった 王宮近くにある門 自分よりも大きな荷を背負ったロバ君

 旧市街の迷路は思っていたよりも道が太く、自称ガイドの取締りが強化されたとかでうるさく付きまとわれることもなく快適。と思っていたら、予想していたのとは違う道を歩いていた。「地球の歩き方」に出ていた周回ルートを歩くつもりだったのだが、いつの間にか復路で歩くはずの道に入り込んでいた。

 メディナの中を歩いていると、ふと映画「スターウォーズ」を思い出す。なぜかっていうと、男性(&少数の女性)が着ている三角フードのついたコート(ジュラバ)姿がジェダイの騎士たちを彷彿とさせるからだ。慣れないうちはすれ違いざまにオビワンじゃないかとオジサマ方の顔をまじまじと覗き込んでしまった。衣装デザイナーはジュラバからヒントを得たに違いない。

 日中は休みなのか、それとも犠牲祭だからなのか、シャッターを閉めた店も多い。帰りがけに商いの支度をしているところを見かけたから、きっと日中は閑散としているのだろう。旧市街の奥まで歩いて行くと、すれ違いざまに「ナメシガワ」と言われることが増えてくる。

扉を閉ざした店が多かった タンネリ(右も) 右側に脱色槽がある
 タンネリという皮の染色作業場があり、「こっちに来い」と言われるままについていくと、建物のテラスから見下ろすことができる。バッグなどの革製品を売っている店が建物の屋上やテラスを開放している様子。案内人は当然ながらチップを要求してくる。この案内人君はあちこちの店に顔が利くみたい。革製品の店はどこも売れていない様子だ。この案内人に場所代を要求してビジネスが成り立っているのかもしれない。

小学生ガイド

 旧市街を一通り歩き、「地球の歩き方」に出ていたマリーン朝の墓地から旧市街を見渡そうと、北側のギッサ門に向かう。地図では単調な道に見えるのだが、案の定道に迷ってしまった。傍らで遊んでいた小学校3年生ぐらいの女の子に「バブ・ギッサ(ギッサ門)」と尋ねたら、もっと北だという。

 「ついて来い」というジェスチャーをして歩き始めたのでついていく。予想していたよりも遠い。私たちの先をどんどんと歩いていく。途中、中学生ぐらいの男の子が彼女に寄ってきて何か声を交わした。勝手な想像では「この2人はあたしの客(カモ?)なんだから、あんたはあっち行って」というところかな。

 確かにかなり歩いたので何かお礼をしなくちゃいけないとは思いつつ、お菓子類は一切持っていない。「どうしようか」と夫に相談したら、「1DHコインをあげればいいよ」という。夫がジーンズのポケット内のコインを探り、チャリンという音がしたとき、彼女の目つきが一変した。あどけない小学生の顔じゃない。とても大人びてというか老成した浴深い顔に見えた。

 ギッサ門まで来たところで彼女はくるりと振り返った。明らかに何か期待している目。夫が1DHコインを渡したら、ムッとした表情になって何か言った。言葉が分からなくても「もっとちょうだいよ」と言っていることは分かる。夫は軽くあしらって終わったけど、たとえ子供とはいえむやみに道を聞いたりするのはまずかったかな、と反省した。

内側から見たブー・ジュルード門 フェズ旧市街全景 遠くには雪をかぶった山々が見える

 ギッサ門を出て道路を渡り、墓地の中を上っていく。墓地はほとんど放置状態だ。朽ち果てた城壁の反対側に回ると、フェズの旧市街が眼前に広がった。遠くにはアトラス山脈だろうか。雪をかぶった山々が見える。墓地にはロープでつながれた牛が昼寝をしていた。のどかだ。
 
 ふいにどこかのモスクからお祈りを呼びかけるアザーンが始まった。すると、それを合図にあちこちのモスクでもアザーンが始まり、まるでこだましているかのよう。たとえが悪くてイスラム教徒の人に怒られちゃうかもしれないが、一匹の犬が遠吠えを始めたら、回りの犬も反応して遠吠えしているようにも聞こえた。この墓地からの眺めはフェズで一番気に入った。

■安宿はわびしい

オテル・アモールの入り口 宿泊したツインルーム

  駅前のイビスは1泊しか予約していなかった。あとの3泊はもっと安いところにする。最初に様子を見に行ったのがオテル・アモール。「地球の歩き方」には暖房があると出ていたので選んだのだが、実際に行ってみたら暖房はないし、風呂場のお湯が出るのも夜8時から10時の間だけだという。おまけに12時以降でないと部屋の中を見せてもらえない。「掃除前でもいいから」と頼んでもダメ。モロッコはどこでもこんな感じで、「部屋を見たいなら12時すぎに来い」と言われた。

 次いで近くのオテル・ドゥラペに行くも、「昼過ぎにならないと部屋があるかどうか分からない」と言われ、しかも宿泊料も高くて1泊目のイビスを上回っちゃう。で、いったんは却下したオテル・アモールにする。

 部屋の床は石だから底冷えする寒さ。やはり冬は暖房がないと厳しい。余分の毛布がクローゼットにあったので2枚追加した。おまけにタオルがない。いくら安ホテルだからってタオルが1枚もないってことはない、と思ってフロントに取りに行くと「お湯が出るのは8時からだからタオルは8時まで待ってくれ」と言う。8時ちょうどに取りに行ってもまだ届かず、10分以上待たされた。3日間、この繰り返しだった。

 困ったのは2日目の夜。私がフェズ近郊の温泉を訪問する間、夫はアルジェリア国境に近いウジダまで鉄道で往復する予定になっている。チェックインする前から「夫は2日目の夜は真夜中の午前2時半ごろ鉄道でフェズに戻ってくる。フロントに誰かいて中にちゃんと入れる?」って英語とスペイン語とアラビア語の会話帳まで使って確認。そのたびに「OK」とか「ノープロブレム」とか返事もらっていた。

 それどころか「あまり強く叩くなよ。軽くノックするだけでいい」なんて注意まで受けていたというのに、当日は夫から「ホテルの外にいる。誰も出てこない」と携帯メールが入り、私が3階から1階まで降りて鍵を開けた。フロントは真っ暗で誰もいなかった。翌朝、フロントの人は何もなかったかのような顔をしていた。海外で使える携帯を持参しての旅行は今回が初めてで、大いに役立ったことになる。

■モロッコのごはん

 旅先で珍しいモノを食べるのは旅の楽しみのひとつでもある。今回特に楽しみにしていたのは、煮込み料理のタジン。あちこちの旅行記で「おふくろの味」とか「日本でいえば肉じゃがみたいな料理」などと書いてあるのを見て、勝手に期待を膨らませていた。
一番有名なモロッコ料理タジン とんがり帽子みたいなタジン専用鍋 葉っぱがぎっしりつまったミントティー

 長時間の移動を経て、初めてまともな料理を食べたのはモロッコ到着2日目のお昼。当然、このタジンを頼んだ。ビーフとチキンがあって私はチキン、夫はビーフ。出てきたのを1口食べて『う〜ん、店の選択が悪かったのかな。それほどおいしくもないな』と思った。煮込み料理と聞いていたからもっとホッカホカの熱い料理だと思っていたのに、ぬるかったせいかもしれない。

 夫はもっと辛口評価。1口食べるなり「うっ、マズイ!」と絶句。一口目にプラムを食べてしまい、予想とは違う酸味にうろたえたらしい。とにかく最初のタジンで「胃の動きがピタリと止まった」そうで、モロッコにいる間中、食欲はいつもの半分以下。私はあれこれ食べてみたいタチで旅の間の食欲は3割増しになるので、2人の食欲を調整するのにとても苦労した。

 せっかくなので、夫に構わずガシガシ食べる。モロッコ料理で一番口にあったのはハリラというスープかな。トマトベースでパスタやご飯が少量入っている。なぜかどこで頼んでも東洋風の柄のどんぶりで出てきた。あのあたりに共通する料理のシシカバブ(串焼き)やケフタ(ひき肉団子の串焼き)は普通においしい。どこでもポテトフライが付け合せになっていた。

モロッコの味噌汁的存在ハリラ クスクスは写真だと上左のタジンに似ている 朝ごはんだけはフレンチスタイル

 クスクスは、やはり店の選択を誤ったのか、パサパサしていて風味に欠け、正直言って自分で作るクスクスの方ほうがおいしいと思った(自分のは日本風にアレンジしてあるから当然だ)。食後のミントティーはコップにミントの葉をこれでもか!ってぐらい押し詰めてお茶を注いである。お砂糖入りで甘い。もともとミントの風味はそれほど好きじゃないから、1度しか飲まずに終わった。

 朝ごはんだけはフランス風。近くのカフェでカフェオーレとペストリーもしくはクロワッサンを食べた。モロッコの人は朝が遅いのか、それとも犠牲祭の休暇シーズンだったせいか、朝8時くらいだとフェズのカフェはガラガラ。午後ともなると、道端に並べられたテーブルはびっしりと男性客でひしめき合う。女性客の姿は少ない。女性同士や女性連れの客は、店の奥や2階の席を利用することが多いみたいだ。

 こうしてみると、あまり食べ物に恵まれた旅とはいえなかった。でも、それでいいと思っている。なんだか怪しげな味のするモノとか、見たこともない不気味なモノとか、そんな食べ慣れないモノを食べて「ウマイ!」と思うことはあまりない。どこの店に行くべきか、事前にちゃんと調べればいいんだろうけど、怠け癖は変えられそうにない。ふらりと入った店で口に合わない(はっきりいってマズイ)モノを食べ、『あ〜、遠くに来たんだな〜』とシミジミ旅情を感じるのが私の旅のスタイルなんだろう。3.港町タンジェに進む→


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