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| カラコルムハイウエーの旅 4.密輸入を手伝う? | ||||||||||||||||||||||
税関もイミグレも、係官は全員漢族。そういえば「西部大開発」の旗頭のもと、東から漢族の役人が乗り込んできて要職についていると聞いたことがある。辺境の地で数年をすごせば、中央に戻った時の出世が期待できるんだとか。本当の話かどうか知らないが、税関の役人はものすごく感じが悪かった。
次いで、私たちの番になった。リュックの底まで探られ、化粧ポーチや下着の入っている袋の中までチェックされたのは初めて。非常食として持っていたカロリーメートまで「これは何だ」と詰問され、物欲しそうな顔をされた。隣でチェックを受けていた日本人のSさんは、トカゲ模様の刺青シールを腕に貼っていたのだが、役人はそれに目をつけてSさんからシールをせしめていた。ここの連中は暇をもてあましているだけでなく、腐敗しきっている。非常に不愉快だった。
●フンジュラブ峠(写真は目次にもあります) タシュクルガンはよく晴れていたのに、高度をぐんぐん上げるにつれ、きょうも曇ってきた。それどころか、きょうも途中のところどころで吹雪いた。道の脇を流れる川は、昨日とは反対方向に流れている。分水嶺を1つ越えたらしい。赤いスカーフを被った少女が羊を追っている。回りは雪山。同じ地球上にこんなところがあるんだなぁと思うけど、あの少女が東京に来て新宿の高層ビルを見たら、同じように感じるのかもしれない。 雪で覆われている場所がだんだん多くなってきた。岩の上に大きめのプレーリードッグみたいな動物を発見。「あっ」っと思って窓を開け、カメラを構えても遅い。通路をはさんで隣に座っていたパキスタン人のおじさんが私を見ていて、「ほかにもたくさんいるから」と慰めてくれ、次から次に見つけてくれた。目がいい。この動物、あとで調べたらgolden marmotというんだそう。ヒマラヤとかの高地に住んでいるらしい。確かにモルモットみたいな動物なんだけど、marmotとモルモットは違うんだとか。モルモットは英語ではguinia pigという。どこかで誤訳されてしまったのだろうか。
国境のフンジュラブ峠に着いたのはパキスタン時間の午後12時50分(北京時間の3時50分)。直前まで吹雪いていたのに雪がやみ、青空が顔を出した。ラッキー。さすが標高4730mだけあって空の色は一段階暗い感じ。わ〜いとバスから飛び降りて、早速写真を撮りまくる。日本人的すぎるかも。Sさんが「よくそんなに元気に走れるねェ」と呆れたような顔をしている。別に息苦しくはないけど、しばらくすると頭の回りを締めつけられるような感じがしてきた。悪さをした孫悟空が頭のタガを締められると、こんな感じなのかもしれない。バスに乗っているウイグル族のおばさん2人は「頭痛がする」と苦しそう。あんまり長くいるとみんなに迷惑をかけそうだ。バスに戻り、パキスタン人の乗客には「シュクリアー」、ウイグル族には「ラハメット」、漢族の運転手さんには「謝謝」とお礼を言う。パキスタン人のおじさん6人が「ウェルカム・トゥ・パキスタン」とニッコリしてくれた。パキスタンは怖い国なのではないかと、ちょっと脅えていたけど、この分なら大丈夫そうだ。 ●現代のシルクロード 中国では右側通行だったバスは、パキスタンに入ると左側通行になる。といっても対向車は1時間に1台あるかないかだから、ほとんど道の真ん中を走っていて違いは分からない。ただし、景色はパキスタンに入るとがらっと変わった。山容はノコギリ状にとげとげしくなり、色調はこげ茶色になっている。また雪が降り出したが、そのうち雨に変わり、いつまでたってもやまない。雨の中、高度はどんどん下がっているのに、気温は中国側にくらべて明らかに低い。バスの窓は何ヶ所か壊れているから、閉めても閉めてもだんだんと開いてくる。寒くてしょうがない。パキスタン時間の午後2時半前にディーのチェックポイントに到着。バスを降りてパスポートのチェックを受ける。みんな「あぁ、日本人か。よく来た、よく来た」という歓迎ムード。バスに乗っているおじさんたちといい、なかなか親日的だ。
んん??? なぜかみんな真剣な表情で、必死になって屋根の荷物を降ろしている。岩山に囲まれて家なんて一軒も見えないし、だいたいスストはまだ先のはずなのに。おじさんの1人が私を見つけてニヤっとした。寄ってきて親指と人差し指をこすり合わせて見せ、「パキスタンの役人はずるいからね、あらゆる機会にお金をふんだくろうとするんだ」という。これってもしかして密輸? 「荷物を隠しておいて、あとで取りにくるの?」って聞いたら。「その通り」だって。ついでに「あんた、英語話せるんだよな。悪いけど、バスの後ろを見張っててくれない? 他の車が来たら教えてくれると助かるよ」。なんだか知らないうちに、見張りとはいえ密輸の手伝いをすることになった。でも、中国側の税関で不愉快な思いをしただけに愉快な気分。「よし、やったろうじゃない」という気になる。 この人たちはしょっちゅうこんなことをしているらしい。息はピッタリあっている。あっという間に大方の荷物が岩陰に隠された。最後の荷物を降ろすとき、ダンボールの包みが破けて中身があらわになった。白い布地だ。私が「あっ!」と声を上げたら、 1人が「生地の関税は高いからね」と言う。このカラコルム・ハイウェーは、その昔アレクサンダー大王やマルコポーロも通ったという。東洋と西洋を結んだシルクロードの一部なのだ。しかし、今でもこんな形で布地の運搬に利用されているなんて! 自分が歴史の一部になったような誇らしい気がする。実際に運んでいる布地が綿なのかシルクなのか聞き忘れてしまったけど、シルクと思うことにしよう。 みんなの作業が終わった時、あまりの手際のよさに私とSさんは「Good Job!」なんていいながら拍手をしてしまった。おじさんたちは嬉しそう。同時にあくまで用心深く、「いいかい、スストの税関でパキスタン人は他に荷物を持っていなかったかって聞かれたら、見ていないから持っていないと思うって答えてくれよな」なんて依頼され、「任せてよ」と請合う。 それから30分ほどたった午後4時ごろ(パキスタン時間)スストについた。イミグレは屋根しかない東屋風のところに「外人」「中国人」「パキスタン人」と書かれた机が3つあるだけ。税関なんて、イミグレ周辺の空き地でリュックの中をチラッとみただけ。バスに同乗していたパキスタン人の荷物については、何も聞かれずに終わり、ちょっと拍子抜けした。中国に比べるとかなりいい加減だけど、居心地がよさそうな予感がする。→5パスーでインディ・ジョーンズごっっこへ進む |
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