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その4.ザンビアで忘れ物
     
     
 初めてブラックアフリカ(サハラ以南のアフリカ)に行ったのは98年の秋。ジンバブエを中心とした旅で、南ア、ザンビア、ボツワナにもちょこっと寄った。見所といったら、世界三大瀑布のビクトリアフォールズ、グレート・ジンバブエの遺跡、ブラワヨからビクトリアフォールズへの夜行寝台列車、ゾウがうじゃうじゃいるボツワナ・チョベ国立公園など、たくさんある。でも、一番印象に残ったのは、アフリカの人々の暖かさと大らかさだった。

 私のカメラを見つけると、大人も子供も寄ってきて、「撮って! 撮って!」と明るい笑顔を向けてくれる。ジンバブエの首都ハラレからマシンゴへのバスに乗った時、私が最後尾の座席によっこらしょと座って顔を上げたら、乗客は全員降り返って私をじっと見つめていた。誰かが「写真を撮って」と言ったら、「写真!」「写真!」の大合唱。「OK じゃあみんなの写真を撮ってあげましょう」とパチリ、写真を1枚撮ったけど、中には「俺はみんなと一緒じゃなくて、1人だけの写真を撮ってもらいたいんだ」なんてわがまま言う人もいて、なだめるのに一苦労した。とはいえ、写真を撮っても小銭をせびられることもないし、「写真を送ってくれ」なんて言う人もいない。みんな、単に写真を撮ってもらうだけで満足しているみたい。不思議だ。
 それに田舎町だと道ですれ違うたびに“Hello. How are you?”ってニッコリ声を掛けてくれる人がたくさんいて、返事をするだけで疲れるぐらい。思う存分リラックスしてしまった。ジンバブエで沈没する旅行者が多いというのも、よく分かる。

「バナナは買わなくてもいいから写真撮って!」と言われた。(マシンゴのバスターミナル)

  ただし、リラックスしすぎたのが悪かったのか、またまたとんでもない失敗をしでかしてしまった。旅の最後になって、あとは日本に帰るだけというジンバブエ・ビクトリアフォールズの空港で気が付いた。家のカギ、定期入れ(通勤定期4ヵ月分とイオカード、運転免許証が入っている)、撮り終わったフィルム7本を入れてある準貴重品袋がないっ! 朝方チェックアウトしたザンビア・リビングストンの宿でその袋を見た記憶があるから、荷物を作り直した時に置いてきたらしい。そういえば、テレビの横に袋を置いたような気がする。 

 とはいえ、再び国境を越えて10数キロ離れたリビングストンまで戻る時間なんてもちろんない。すっかり打ちひしがれて飛行機に乗った。家のカギや定期入れは諦めがつくけど、もう一度来たって同じ写真を撮ることはできない。機内では隣の席の人が話しかけてきても気もそぞろ。『冬休みもアフリカに来ようか』とか『誰か知り合いで近くビクトリアフォールズに来る人はいないかな。そしたら運び屋を頼めるかもしれない』とか、あれこれ考えていた。

長距離バスが途中下車すれば物売りに囲まれる。カメラをみつけると自然に笑顔になる

 トランジットのために数時間すごした南ア・ヨハネスブルク空港でリビングストンのホテルに電話してみたけど、何回トライしても話中。なんといってもザンビアだから、回線が通じないのかもしれない。大家さんは隣に住んでいるから家に入ることはできそうだけど、手ぶらで行くわけにもいかない。あわてて空港内の店でいかにもアフリカ風の木彫り人形を買う。ヨハネスブルクから関空への機内も、目が覚めているときは忘れ物のことばかり考えていた。どうもあきらめきれない。

  大家さんにお土産をわたして合いカギを借りたのは深夜零時すぎ。いつも2時ぐらいまで起きている大家さんでよかった。家から再びザンビアへに電話してみた。そしたら今度はつながった。「もしもし、えーと日本からかけてるんだけど…」と言い終わらないうちに「あなた忘れ物していったでしょう!」と返事があった。私の忘れ物はフロントにちゃんと届いているらしい。少しホッとして尋ねてみた。「私の住所を書いた封筒を送るから、それに入れて送り返してくれる?」「いいわよ」。すぐに封筒を送った。中には「アフリカ南部を旅したのは初めてですが、自然も人間もよくてとても楽しかった。でも写真がないと、どんなにいいところだったか友達に説明するのが難しいのです。ぜひ送り返してください。よろしくお願いします」というようなことを書いた手紙を同封した。

「ねぇねぇ写真撮って」と言っておいてあっかんべ〜。子供のやることは万国共通(リビングストン)

 そしたらちょうど1ヵ月後、ポストの中に見覚えのある黄色い封筒が入っていた。私の字で宛名が書いてあり、ビクトリアフォールズ柄の切手がいっぱい貼ってある。やったぁ! 小躍りして喜んじゃった。中には必要な物が全部と「アフリカを好きになってくれてありがとう。自分たちでも素晴らしい大陸だと誇りに思っています。ぜひまた来てLiving Innに泊まってください。改装の計画もあるのでお楽しみに」という手紙が入っていた。忘れ物のおかげで旅の余韻を1ヵ月も余分に味わうことができ、ますますアフリカを好きになった。また行きたいよアフリカ。

(おまけ)この旅行中にカメラが壊れていたようで、4分の1ぐらいの写真がまともに写らず、写っているのも不本意なできだった。リビングストンの宿Living Innで親切にしてもらった女の子(多分、電話に出た人)の写真を撮ってあげたのに、写っていなかったのでおわびの手紙を送った。せっかくフィルムが返って来たっていうのに…


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