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その1.空港に泊まろう
     
     
 私はほとんどの場合、宿の予約もせずに1人で旅に出る。これまで一体何人から「よく今まで無事でしたね」とか「怖い目に遭ったことはないんですか?」と尋ねられたことか分からない。そう言われてみると、怖い目に遭ったような気もするんだけど、いつ、どこで、と突っ込まれると、どうも思い出せない。もともと私は臆病で用心深いから、自分なりに怖い目に遭わないように注意しているつもりだ。でも、問題はもっと別なところにあるのかもしれない。怖いという感覚が、どうも他人とズレているようなのだ。

  たとえば、私は現地人向けの超満員の市バスに乗るよりも、タクシーに乗るほうがずっと怖い(というと、たいていの人は意外そうな顔をする)。だって、少なくとも市バスならほかの乗客もいるし、路線以外の変なところへ連れて行かれる心配はまずない。犯罪に巻き込まれたところでスリぐらいしか考えられないから、自分で防御することが可能だ。
ビルマ(ミャンマー)の首都ラングーン(ヤンゴン)国際空港の出発ロビー(本文とは関係ありません)

 でも、タクシーという密室空間は、なんだかすごく犯罪向きにできているように感じる。もしタクシーの運転手が悪い人で、どこか知らないところに連れて行かれたりしたら、対応のしようがない。万事窮す。そこまでひどい目に遭わなくても、たいていの空港には悪徳タクシーがいるもんだ。世界の真面目なタクシー運転手さん、ごめんなさい。でも、私はタクシーとは相性が悪いみたいなのだ。

 だから、私は空港から市内に出る時は、なるべくタクシーに乗りたくない。夜遅くどこかの空港に着いて、宿の予約をしていない時(つまりほとんどの場合)は、迷わずに空港のどこかで夜を明かす。「空港なんてかえって危ないよ」と言われそうだけど、空港には警備員もいるし、多くの空港は深夜でも人が行き交っている。24時間営業のカフェやインターネットへのアクセス設備のある空港だって多いし、もちろん冷暖房完備でトイレもあるから、追い払われない限り、まずまずの居心地が保証される。私にとっては結構快適な居住空間なのだ。

ジンバブエの首都、ハラレの国際空港。(本文とは関係ありません)

 断言してしまうけど、空港に泊まることは貧乏くさくもないし、惨めでもない。カナダ人女性Donnna McSherryの運営するサイトThe Budget Traveller's Guide to Sleeping in Airports(英語)をのぞくと、いろんな人が空港に泊まった経験を投稿している。空港で1晩すごすのは、全然特別なことじゃない。成田空港のところには、1晩に6回パスポートチェックされてもいい人には、100ドル出してホテルに泊まるより快適かもしれない、なんて書き込みがあり、思わず苦笑した。一方、関空の評判はすごくいい。ベンチ状の椅子で横になれる上、静かなところが評価されているみたい。朝一の便が午前9時ごろなので、邪魔されずにゆっくり寝ていられるという声もあった。

これまで私が空港で夜をすごしたのは、以下の都市。

バンコク
 出発ロビーのベンチで2回、イスラム教徒用の祈り部屋で1回、夜をすごした。イスラム教徒用の祈り部屋は、バンコク在住の友人に勧められた。内部はカーペット敷きで、メッカの方角を示す矢印が置いてある。スクリーンで男女のスペースを区切ってあるが、スケスケで向こう側が覗ける。私が行った時は、女性用のスペースには誰もいなくて、男性用のスペースで2人が寝ていた。本当は異教徒は入ってはいけない所だと思う。 
イスラム教徒の祈り部屋。突き当たりの壁に立てかけてある黒字に白の矢印は、メッカの方角を指している

当然ながらメッカの方角に頭を向け、アラーの神に感謝しつつ眠りについた。朝になって気がついたのだが、入り口に「夜をすごすのはやめてください」と書いてあった。もう2度と行けない。ロビーの椅子はひじ掛付きで横になれない。ロビーも祈り部屋も冷房が効きすぎて寒い。
 寄る年波のせいか?ここ2回は空港近くのドーンムアン・マンションを利用している。 

シンガポール
 あまり居心地の良いところが見つけられず、右往左往。同じく冷房の効きすぎで、何回か空港施設の外に出て、体を温めた。人通りはバンコクよりも少ない。トランジットルームは満員のことが多い。泊まりたければ予約したほうがいい。

 2004年10月に行ったときはトランジットラウンジの椅子で寝たが、やはり寒かった。ほぼ水平になるマッサージチェアはもう満員だった。空港内にはインターネットができるPCがたくさんあり、無料で使える。

完全に横になれるわけじゃないので、予想よりも寝心地は悪い。もちろん寒い。

カラチ(パキスタン)
 パキスタン航空(PIA)でアテネまで行く時のトランジット。本当ならトランジット用のホテルにPIA持ちで泊まれるはずだったが、カラチ到着が遅れたため、空港泊になってしまった。ベンチがあり、横になれる。ただし、女子トイレにはゴキブリがチョロチョロしていた上、なぜか老婆が住みついていて、トイレ使用料を寄越せと迫られた。

ローマ
 チュニジアへ行く時のトランジット。ベンチで寝袋を使って熟睡していたら、夜中に警備員だか警官に警棒で突っつかれて起こされてしまった。「パッサポルト」と言われたのでパスポートを見せたら、何も言わずにそのまま去って行った。気持ちよく寝ていたところを起こされたのでムッとしたけど、『治安はいいってことだ』と思い直し、安心してまた寝た。

マイアミ
 中南米との間を往復する時に、少なくとも3、4回は夜をすごしている。適度に人通りがあり、適度な暗さで快適。椅子はひじ掛けがあって横になれないけど、ラテン系の人たちが床で寝ているので、疲れている時は私も床で寝る。スペイン語が飛び交っていて、これから中南米に向かうときは、気分が盛り上がる。

メキシコシティ
 空港で夜を明かそうという人がほとんどいなくて、居心地が悪かったことしか覚えていない。かなり暗め。

 そういえば何年か前、パリのシャルル・ド・ゴール空港で生活している人のことが話題になった。それを題材にした「パリ空港の人々」という映画までできたけど、つい見逃してしまった。おもしろい映画だったんだろうか? (追記)この映画はアメリカで「ターミナル」という映画にリメークされ、2005年の正月映画として公開される予定。スピルバーグとトム・ハンクスで舞台はニューヨークのJFK空港。ざっとあらすじを聞いたところでは、随分話が変わるみたいだ。(追記:2004年10月)

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