|
【泉質】鉄鉱泉(掲示なし)
【泉温】17度ぐらい(以前は14度前後だったけど上昇したそう) 【湧出量】不明
【住所】熊本県鹿本郡植木町宮原289−2 電話096−274−6012 熊本市街と山鹿の間にある。バス停は「宮原温泉入口」が最寄だけど本数が少ない。「宮原温泉」か「宮原温泉前」で降りても5分くらいで歩ける。
【浴槽】内湯(加熱浴槽)
|
 |
【営業時間と定休日】未確認。夜は19時頃まで 【入浴料】400円 地図(別ウインドウで開きます)
日帰り入浴か宿泊か迷った末、温泉仲間の勧めもあって泊まることにした。予約の電話をして「1人で泊まれますか?」と聞いたら「(年齢は)おいくつですか?」と聞かれた。旅館の予約で年齢を聞かれたのは過去に例がない。なんかよく分からないまま自分の年齢を次げたら、電話の向こうで無言状態が続いている。「あの、私が1人で泊まりたいんですけど」といったら、「えっ、うちは湯治宿で寂しいところですし、東京から若い女性(実際には全然若くない)が来るようなところではないんですけど、どこかほかとお間違えでは…」と困った様子。最初はどうも私が高齢者を1人で送り込むのではないかと思ったらしい。仲間に「お湯がいいから」と勧められたことを説明し、どうにか納得してもらった。
 |
宮原温泉は田んぼに囲まれた小さな温泉地。あるのは元湯旅館と長命館の2軒だけ。「1軒宿の温泉」というのはよく聞くけど、「2軒宿の温泉」という表現はあるんだろうか。国道3号にあるバス停から元湯旅館に通じる道も両側は水田だ。近づいて行くと大きいけど普通の民家にみえる。看板も錆びていて字が読めない。どこかで似た看板を見たことがあると思ったら、別府の神丘温泉だった。神丘は好きな温泉なので期待感がいやおうにも高まる。
築100年を超す木造旅館は、改装された長命館と極めて対照的だ。ちょうど外にいた女将さんは「あら、早かったですね」と迎えてくれた。きょうの宿泊客は私だけの貸し切り状態。さっそく部屋に案内してもらう。客室部分の外壁はなく、ガラスの吐き出し窓すぐ内側が長い渡り廊下になっていて、ちょっとした縁側というかサンルームみたいになっている。柱の間には温泉の成分で薄茶色に変色したタオルが何本もかかっていて、正統派の湯治宿だなぁとしみじみ感じた。
|
| この廊下のあたりが1番古いそう。築100年の貫禄がある |
| 冷房はない。あちこちの窓を開け放ち、扇風機を回す。トイレは今時珍しい汲み取り式。しかも、置いてある紙はシワシワのちり紙だ。まだ4、5歳だった時、おばあちゃんが連れて行ってくれた誰かの家がこんな感じだった。何十年かの間忘れて空白になっていた記憶が蘇ってくる。トイレの窓からはどこまでも広がる田んぼが畑の向こうに見えた。
一休みして早速一風呂浴びに行く。浴室のあたりは木造校舎のような造り。湯治に来た人たちが詠んだ一句が毛筆で清書されてあちこちにはってある。ますます学校みたいだ。脱衣所は浴室と一体型で、境界になるような壁はなく、段差もほとんどない。もちろんロッカーなんてものもなし。あたりには常連さんのものか、または忘れ物なのか、茶色く染まったタオルが整列している。
|

|
| 浴槽の奥半分は冷めないようにビニールシートがかぶせてある |
 |
浴室中央の浴槽は半分ビニールシートがかけられていた。冷鉱泉を加熱して使っているので、冷めないようにするためだ。あとで女将さんに聞いたところ、夏場は朝方1回風呂を炊けば、1日中もつらしい。浴槽は3つに区切られていて、手前が1番ぬるい。ぬるくなりすぎたら浴槽内の仕切りというか側壁にある穴から栓を抜いて、奥の浴槽から熱い湯を入れる仕組みになっている。
黄土色の湯には油膜のようなものが表面に張っていて、茶色のモロモロが浮いている。いかにも効きそうな感じ。先客の常連さんは福岡の八女からしょっちゅうやってくるそうで、「40歳のときに事故で歩けなくなったけど、ここに来たら1日で歩けるようになった」という。ホントかな。でも、女将さんによると、来るときに杖をついて歩いていた人が、一度入浴したら杖なしで歩いて帰ったこともあるそうだ。若ければ若いほど効き目が出るのが早いそう。リューマチはだいたい1ヵ月で治るという。
|
| 源泉は飲んでみるとそれほどクセがない |
体や髪を洗う湯は右手の壁際にあるゴミ箱のようなところから手桶で汲む。カランもシャワーもなく、このかけ湯を使うしかない。さらに手前には半円状になった源泉の飲泉コーナーがある。常連さんたちは「汗がひかないから」と、こぞってこの冷泉を浴びていた。確かに体にズシリとくる湯なので、私もならって冷たい源泉を掛けてあがった。源泉は飲むこともできる。それほどクセはなくクピクピ飲めのが意外だ。飲む前後に金気臭が鼻腔をくすぐる程度で、匂いもそれほど強くない。
| 熊本の夏は暑い。夜は窓という窓を開け放っても、それほど涼しくならない。おまけに蛾や蚊がブンブン入り込んでくる。べ−プマットを2ヵ所においてもらい、早々に扇風機のタイマーをセットして寝た。常連の入浴客はこぞって「えっ、1人で泊まっているの!?」と驚いていたけど、ここは「2人でラブラブ」よりも「1人でブラブラ」来るところだと思う。間違っても付き合い始めた彼女と一緒に止まるところじゃないのでご注意を。食事は大した物は出ないけど、無農薬で自家栽培しているお米がおいしい。1泊2食付きで7000円(税別)。
朝は7時くらいに「お風呂の用意が出来た」と知らせてくれたので、女将さんと一緒に入った。入浴客が多かったころは、夜になるとお湯が透明になることもあったそうだ。それだけ湯の花が皮膚に吸収されるってことなんだろう。気のせいか、私も肩が軽くなったのが分かる。ず〜っとバックパックを背負っていたのでかなり肩こりしているはずなんだけど、明らかにこの日は楽になった。人によってはいったん重い感じになる(悪くなる)人もいるそうだ。
|

|
| かけ湯は冷めにくいようゴミ箱型の箱に入っている |
到着後、夕食後、朝食前と3回風呂に入ったせいか、金気臭が体に染み込んだような気がする。入浴中はそんなに気にならなかった(鼻が麻痺していた?)のに不思議なもんだ。特にバスに乗っていると、停車するときに金気臭も慣性の法則でいったん体の前に漂ってから戻ってくるのか、すごく気になった。町を歩いていても、汗と金気臭が化学反応を起こすのではないかと不安になるくらい。とにかく強烈な湯だった。温泉ファン(特に鄙び系好き)なら1度は入ってもらいたいところ。(2003年8月)
|