らくだジャーナルTOPアジアの温泉目次>台湾・関子嶺温泉「関子嶺大旅社」
      
●台湾・関子嶺(關子嶺)温泉「関子嶺大旅社」
      
     
関子嶺大旅社裏口
現在の入口(左)と、現在は裏口になっている日本時代の玄関(右)
 関子嶺は日本人が開発した温泉で、その中でも関子嶺大旅社は一番古い。2007年で創業100周年。水着で入るSPAの流行は関子嶺まで広がりつつあり、関子嶺大旅社は貴重な古顔になっている。とにかく関子嶺で一番古いと聞いただけで、ここに行くことを決めた。

 関子嶺温泉のバス停は、本来なら関子嶺大旅社を通り過ぎて1キロくらい坂道をのぼったところにある。ちょっと前までは関子嶺大旅社のすぐ近くにあったそうだ。親切な運ちゃん(台湾でも「ウンチャン」で通じる)が「日本人? どこへ行くんだ?」と聞いてくれ、バ関子嶺大旅社の前で降ろしてくれ「あそこだよ」と指差して教えてくれたた。

私の泊まった部屋(左)と部屋風呂の温泉(右)

 みるからに活気のない寂れた印象の宿。入っていくと気の弱そうな男性がいて、平日だからか1泊1000元(4000円弱)だという。地球の歩き方には1人なら1200−1600元と書いてあったから、値切る必要もなかった。いちおう部屋を見せてもらう。安宿ながら床はきれいに掃除してあるし、エアコン、冷蔵庫、ドライヤー、電気ポットなど揃っているので即決する。部屋のお風呂も温泉を利用している。

 部屋風呂のほか、フロントと同じ階に大き目の貸切風呂(大浴場という位置づけらしい)が1つ、階下に小さめの貸切風呂3つがある。24時間利用可能で、鍵が開いていれば自由に使ってよいそうだ。階下の通路を右手に進むともう1つ玄関がある。こちらは日本時代のままで日本の温泉旅館と見違えそう。裏口とはいえ、いまだに利用されているのが嬉しくて何枚も写真を撮ってしまった。

一番手前にある貸切風呂

 さっそく階下の貸切風呂に行く。掃除が終わってあまり時間がたっていないらしく、どの浴槽もお湯が少ない。一番手前にある一番小さな浴槽を選ぶ。パッ見はほとんどセメント。つまり灰色の泥湯で、これがめちゃくちゃ熱い。とても入れないので、仕方なくホースで加水する。あとで分かったのだが、換水のときだけ源泉の投入を多めにしているらしい。いったんお湯がいっぱいになると湯加減はちょうどよく、いつ入っても加水の必要はなかった。浴槽が満たされるまでは源泉を多めに投入し、それ以降は源泉の投入を絞っている様子だ。

 透明度はほぼゼロ。目で見るとネットリと重そうな感じがするが、実際に触ってみるとサラリと軽いタッチで肌がスベスベになる。色以上に臭いが強烈だ。子供の頃、母がベンジンで染み抜きをしていたのを何十年かぶりに思い出した。そうなのだ。存在すら忘れていたベンジンの臭いなのだ。こんな強烈な湯は世界中探してもそれほど多くないだろう。貸切風呂はすべて手桶があるのみで洗面器はない。洗面台で水は出るが、上がり湯なんてものはない。昼にお湯を入れ替えても、夕方には浴槽の底にこってりと泥がたまっていた。これを手ですくって顔や腕などに泥パックすると美白効果があるそうで、一生懸命塗りたくる。

底にたまった泥

 これは部屋風呂も一緒。洗面台のお湯の蛇口を捻った瞬間、お湯が出てくる前にベンジンの刺激臭が鼻を襲い、それから灰色のお湯が出てきた。身体はまだしも髪の毛を洗っていいものか迷う。結局、ヘタレの私は電気ポットの湯を水で薄めて髪を洗うことにした。部屋風呂も比較的大きいのでお湯がたまるまでに時間がかかる。部屋風呂には結局1回しか入らなかった。

  このお湯、視覚的にも嗅覚的にも強烈なだけじゃない。入るとかなりエネルギーを消耗する。心地よい疲労感に包まれ、部屋でゴロゴロしたくなる。関子嶺温泉にはほかにも旅館やホテルがあり、日帰り入浴できるところがほとんど。当初は何カ所かはしご湯するつもりだったのだが、この関子嶺大旅社のお湯があまりにも強烈なので『最古参のここ以上の湯を誇るところはまずないだろう』と勝手に判断し、はしご湯する気が失せてしまった。

日本の湯治宿と変わらない。むしろ布団カバーなんて日本よりも日本的かも。

 この宿はつぎはぎだらけというか、あちこち増築を繰り返したようで複雑な造りになっている。パンフレットに畳敷きの和室の写真が出ていたので、お願いして見せてもらった。畳の部屋に昔風の布団がつんであり、その隣にテレビ。廊下が部屋を囲むようになっている。まさに湯治宿の雰囲気で、宿泊客でにぎわった昔を想像すると涙モノだった。今ではどうみても流行っているとは思えない宿。先行きがちょっと心配だが、私は何回でも通いたい。日帰り入浴は200元(800円弱)。(2007年6月)


らくだジャーナルTOPアジアの温泉目次>台湾・関子嶺温泉「関子嶺大旅社」